2007年9月4日火曜日

1990年代~ナリのコト~(47)

部屋に戻ると、カレーを平らげた千里が満足げにテレビを見ていた。

「おかえりぃ♪」

「ただいま」

「アニキ、ええ人みつけたやん(ニヤリ)」

「そうか? まぁな。泊まってくんか?」

「うん。およろしゅう♪」

「あいよ」

そう言って、自分の部屋に入るとすぐに寝た。落ちる寸前に、すべてはうまくいっている、そう感じ、ささやかな充実感を味わった。

翌朝、いつもよりやや早めに目が覚めたオレ。千里は、まだ寝入っているようだ。まだまだ夏の日差しが差し込む中、身支度を整え午前8時8分には部屋を後にし、自転車にまたがった。彼女の待つコンビニまでは、自転車なら3分とかからない。

まだ余裕はある。そう思ってはいても、ペダルをこぐ足に力が入る。彼女の笑顔に早く会いたい。それが原動力となっていた。

もう数百メートル先にコンビニが見えてきたところで、ふいに横から

「おっはよー!!」

と彼女の声! ちょうど、彼女のマンションに続く路地から彼女は出てきたところで鉢合わせしたらしい。

「わぁ、びっくりした!」

「あはは! もう! 前しか見てないんだもん」

と笑う彼女。

「そう?」

と苦笑いのオレ。

「じゃ、このまま行こっか?」

「オッケー♪」

オレたちは、社に向かって笑いながらペダルをこいだ。

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2007年6月14日木曜日

1990年代~ナリのコト~(46)

オレのマンションから、ナリさんのマンションまでは、ゆっくり歩いても10分そこそこ。

「あ~、おいしかった。ごちそうさまでした」

「いいえ~。今度は、前日からもっと煮込んでおきますわ」

「うん。期待してるね♪ でも、今度はアタシがごちそうするね」

「わ、うれしいなぁ。期待してまっす!」

「でもアタシ、たいしたものできないのよ。それでもよければ、だケド」

「了解なり」

しばし、風にふかれるオレたち。

「千里さん、かわいいね」

「えぇ? まぁ、兄弟やからあんまりわからへんケド」

「あはは、そうだよね」

彼女のマンションの前に来て、彼女は言った。

「今夜は本当にありがとう。すごくうれしかった」

「いや。オレ、ちゃんと言いたかったから」

「うん。ありがとう」

照れ笑いの彼女。オレは、すばやく周囲を見回し人影のないコトを確認すると、そんな彼女を抱き寄せた。彼女の抵抗はなかった。

「・・・千里さん、待ってるよ」

「うん・・・。おやすみ」

彼女の体をゆっくり離しながらそう言ったオレ。彼女も同じように言う。

「おやすみなさい。・・・そうだ、よかったら明日の朝いっしょに行く?」

「え?」

「さすがに社までは、あとが面倒だから途中までの方がいいと思うケドね」

「オッケー。じゃ、七条通りのコンビニの前あたりでどう?」

「いいよ! じゃあ、8:15にね♪」

「寝坊しないように。って、オレか?」

「あはは、そうそう! じゃ、おやすみ!」

「おやすみ!」

彼女を見送り、なんだか、オレは遠足前夜の子どものようにうきうきしながら帰途についた。

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2007年5月26日土曜日

1990年代~ナリのコト~(45)

おずおず入ってきた千里は、ナリさんに目をとめた。

「おんなじ会社の外川さん」

と紹介し、ナリさんには

「妹の千里ですわ」

と、紹介する。

「はじめまして。アニキがお世話になってます」

「いえ、こちらこそ。はじめまして、外川です。よろしく」

笑顔であいさつを交わすふたりを見ながら、オレは千里に言った。

「オマエも呑むか? 腹へってんやったらカレーあんで」

「ホンマ? アタシめちゃおなかすいてんねん」

「こいつ、ここ来るトキはいっつも腹へらして来るんですわ」

オレは、笑いながら彼女にそう言うと、彼女も笑って言った。

「若いもんね」

と、笑う彼女に千里はきっぱり言った。

「それだけが取り得なんです」

「あほ。そんなもんダレかてあったわい」

千里は、オレのつっこみにニヤリと笑うと

「カレー食べる~♪」

と、皿を出してジャーからご飯を盛りだした。それを見ていたナリさんは

「じゃ、アタシ、そろそろ帰るね。遅くまでお邪魔しました」

「あ、ごめん。そこまで送ってくわ」

「ありがとう。じゃ、千里さん、お邪魔しました。また」

「はい! お邪魔虫ですみません。また、来てくださいね」

「オマエんちか? カレー全部食べてええで」

「は~い! って、食べれるか!」

「おっけ! ええノリつっこみや。ほな、そこまで出てくるし」

「あい! いってらっしゃ~い」

もはや、カレーを食べるコトしか目に入っていない千里を後にして彼女とともに外へ出た。マンションの4階には、涼しい風が吹いていた。

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2007年5月20日日曜日

1990年代~ナリのコト~(44)

「ダレやろ?」

彼女を抱きしめるために立ち上がったのだが、その足をインターフォンに向かわせようとして、彼女を見つめた。まだ、涙目の彼女は、我に帰ったように無理に笑みを浮かべようとしていた。

「ごめんね。ちょっと待ってて」

インターフォンまで行き、受話器を取ってオレは言った。

「はい?」

「あ、アニキ? アタシ!」

「あぁ、なんや、オマエか?」

妹の千里だった。京都市内に住む大学生の妹は、食事を求めて時折ここにやってくる。遊ぶのに一生懸命で、金がなくなると腹を減らせてやってくるのだ。

「妹や」

涙をふいて立ち直った彼女にそう言って、玄関に向かう。ドアを開けると妹が立っていた。

「ごめんな、遅い時間に」

そう言って中に入ろうとして、見慣れない女ものの靴に気づいたようだ。

「あ、ごめん。帰った方がええかなぁ?」

「ええよ。入れや」

無碍に返すワケにもいかず、そう言ってしまうオレ。


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2007年5月13日日曜日

1990年代~ナリのコト~(43)

「ナリさん・・・?」

「・・・。ごめんね。・・・本当にアタシ、バカだよね」

涙声の彼女は、オレを見ながら、やっとそう言った。それを聞いて、オレたちはようやくスタート地点に立ったのだと思った。

彼女の中に、ニシダのコトが残っているコトは間違いないだろう。でも、彼女はオレにそれを消してほしいと思っている。ニシダがまだ好き? と聞いて答えた「そんなコトないよ。きっと」の「きっと」には、きっとそんな思いがあるのだと感じた。

「泣かないで、ナリさん」

「うん。ごめんね」

そっと立ち上がったオレは、彼女に近づいた。そして彼女をそっと抱きしめようとした、そのトキその音は鳴った。

「ピンポーン♪」

玄関のチャイムだった。

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2007年5月8日火曜日

1990年代~ナリのコト~(42)

言わなければよかった、そう後悔しそうなになったトキ、彼女は言った。

「もちろん。だって、ニシダさんカッコよかったんだもん」

取り越し苦労どころか、彼女はより饒舌になったコトに少なからず驚いた。

「アタシね、仕事のできる人がすごい好きなのよ。あの人って、ふだんはすごくおもしろい人なんだケド、仕事で熱くなると顔つきが変わるのよ」

前の彼、そう言ってよいのかどうかもわからない発言だった。九州の人は嘘をつけない性格だというのは本当なのか。複雑な気持ちで聞いていた。その後もしゃべり続ける彼女の発言は、オレの耳に入らなかった。

「あ、ごめんね。ひとりでしゃべっちゃったね」

「いや。ナリさんは正直な人やな」

「そうなのかな。でも、本当にごめん。ちょっと無神経だった」

「ううん。でも・・・・」

聞くのが怖い、そんなヒトコトを口にしかけて、戸惑うオレ。でも、ここを突破しなければこれ以上、彼女といっしょにいるコトはできない、思い切って言った。

「今でも、・・・ニシダさんのコト好きなん?」

やや、沈黙があった後、彼女は語った。

「・・・・・。そんなコトないよ、きっと」

「信じてええの?」

「うん」

うつむき加減で語っていた彼女は顔を上げた。オレは、その顔を、目を見つめていった。

「よかった。そのヒトコトを聞かへんかったら、オレ・・・・・、ナリさんが好きだって言えへんし」

彼女の目に涙が浮かんでいた。

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2007年5月5日土曜日

1990年代~ナリのコト~(41)

「Kさんて、自分から告白とかしないでしょ」

学生時代の話をしていると、唐突に彼女はそう聞いてきた。

「わかる? アカンねん。ナリさんは?」

「アタシは、けっこー言う方かな」

「そんな感じする」

「あはは♪ やっぱり? でも、なんで? 好きだったら言えばいいのに。Kさんって、やさしいしモテるはずだもん」

「ん~、むずかしいねん。モテるかどうかはともかく、あんまり向こうから言われてもピンとこーへんねやな。だからけっこー片思いが多いねん」

「わ、アタシそれ苦手かも~」

「あはは。そう。大学時代の後半2年、ずっと片思いの人いてたしね」

「言わなかったんだ?」

「言えへんかった。なんでやろ、わからへんケドね」

苦笑するしかなかったオレ。そこで、オレはあえて振ってみた。賭けである。

「ニシダさんにも、自分から言うたん?」

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2007年5月3日木曜日

1990年代~ナリのコト~(40)

「いただきま~す!」

ビールで乾杯し、ゴクリと一口飲み干したオレたちは、カレーを前にして同時に叫んだ。顔を見合わせて笑いながら、スプーンを進めた。熱々&やや辛めのカレーをハフハフ言いながら口に運ぶ。

「おぉいし~♪」

「ホンマ? よかった~!」

「うん! 本当においしい! 作り方教えて~」

と、うれしい注文に作り方を説明するオレ。

「学生時代からの試行錯誤ですわ」

「へぇ~! これなら食べすぎちゃいそう」

笑いながらそう言う彼女に、オレも思わず笑顔になる。ジャガイモを食べながらオレは言った。

「カレーのジャガイモだめって言う人、たまにいてんねんケド、オレはジャガイモのないカレーはアカンねん。ナリさんは?」

「あ、あたしもジャガイモ好きよ。あとどっちかって言ったら、こんなふうにややスープっぽい方が好き」

「同感! あんまりドロっとしてんのはちょっと苦手やね。あ、辛さ大丈夫?」

「うん。これくらいなら平気よ。でもビールが進むとあとが怖いよぉ」

「あはは! オッケーごゆっくりどうぞ~」

カレーを食べながら、合間にサラダをに箸をつける。思ったとおり、ガーリックのきいたドレッシングだった。

「うん! うまい! このドレッシングてナリさん作ったん?」

「うん! 明日のこと考えたらちょっと~なんだけど、ガーリック入れるとおいしいのよ」

「なるほど、でも明日のことは置いといてもええ味やね。ホンマにうまいもん」

「ありがとう♪ 気に入ってもらえてうれしいな」

カレーで、ある程度お腹がみたされ、サラダをアテにワインを飲んだ。学生時代の話、今の仕事の話、いろいろな話が弾んだ。

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2007年5月1日火曜日

1990年代~ナリのコト~(38)

ピンポ~ン♪

「はぁい!」

「こんばんわ~♪」

彼女もシャワーを浴びてきたのだろう。ドアを開けると、いつも以上に輝く彼女が立っていた。

「どうぞ~!」

「お邪魔しまぁす! わぁ、いいにおい!」

「でしょ? もうほぼ完成でっせ」

「楽しみ♪ あ、はいこれ!」

「え? なに?」

「サラダ。作ってきちゃった」

「おぉ! ありがたい。そこまで手がまわらへんかったし」

「よかったぁ」

「じゃ、そこらに座ってて。準備するから」

オレは、彼女から手渡されたタッパァを受け取り、シンクに置き皿を取り出し盛り付けた。レタス、トマト、キュウリ、カイワレに炒めたベーコンとシンプルながら、ガーリックをきかした食欲をそそる香りがしていた。

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2007年4月28日土曜日

1990年代~ナリのコト~(37)

自転車を走らせ京都駅前のデパートへ行く。今夜はなにか作ろう! そういうトキはたいがいここへくる。慣れた足取りで地下へと降り、まずは野菜売り場。ジャガイモ、たまねぎ、ニンジン、マッシュルーム、ショウガ、にんにく等。肉売り場で、牛肉のスライスを買う。煮込む時間がないので、あえて角切りを避けたのだ。あとは、料理用の赤ワインとトマト缶を購入し、ダッシュでマンションに帰った。

まずは、米をといでやや少なめの水を張り炊飯器にセットしカレーにかかる。オレのカレーは水を使わない。水分はワインとトマトのみ。市販のルーを使っても、これだけでずいぶん味がちがうものだ。たまねぎをみじん切りにしじっくり炒める。ほかの食材を切って炒めるときに、これでもかとばかりに黒コショウを加えて、トマト、ワインを加えクッキングペーパーでおとしブタをして弱火で煮込む。メーカーにコーヒーをセットして第一段階終了。

その間にさっとシャワーを浴び、アクだらけのペーパーをとりのぞきと、ルー、淹れたてのコーヒーと醤油をくわえ、さらにひと煮立ち。コーヒーはコクと辛味を増してくれる隠し味だ。醤油は、これさえあれば食べられないものはないというくらい万能調味料だと思っている。

時計を見ると、7時まで10分というところ。ビールは冷えてるし、さて、あとは彼女を待つばかり。こういう瞬間がけっこう好きである。

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2007年4月26日木曜日

1990年代~ナリのコト~(36)

彼女の家に泊まった夜、彼女の元彼ニシダとオレと同じ部のイカワが急接近しているコトを話す彼女の眼は真剣だった。ナリさんは、まだニシダを想っている。ナリさんとは寝た。でも、だからといって彼女の心はドコなのか? それがオレにとってのハードルとなっている。

いいじゃん、べつに。そう思うコトもできたのだろう。でも、できないのがオレだ。

月曜日の朝、案の定ギリギリまで寝てたオレは、なんとか定時に会社に駆け込んだ。オレのやや後から、やはり駆け込んだ彼女とばったり遭遇。彼女は満面の笑みで、でも周囲に気づかれないように言った。

「おっはよ~♪ 昨日はありがとね」

「いえいえ、こちらこそ♪」

「今夜、楽しみにしてるね」

すれ違いざま、ささやくように言った彼女に、オレも同じようにささやいた。

「オッケー。まかされて~」

学生時代や寮暮らしで料理は好きだったオレは、今夜の手順を考えつつ、その日の業務をこなしたが集中力なんぞあるワケもなかった。イカワの存在も意識的に無視しながら。

「おつかれさまでした!」

と、定時には元気いっぱい退社し、買出しに向かうオレだった。

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2007年4月24日火曜日

1990年代~ナリのコト~(35)

タムロってた連中は、思いのほかおとなしく何事もなく素通りでき、彼女のマンションにたどり着くコトができた。

「ありがとう」

「うん」

「どうする? 寄ってく?」

「いや、今夜は帰るわ。ただでさえ月曜日は起きれへんし」

「あはは♪」

「でも、ナリさん、よかったら明日の夜、ウチに来ない?」

「え? いいケド」

「カレー作ろうて思てんねん」

「ほんと? わ、楽しみ♪」

「オッケー! じゃ、明日は気合入れて作るから、そうやな、7時ごろに来てよ」

「わかった!」

うれしそうな表情を見て、思わず彼女を引き寄せて抱きしめそうになった。でも、オレ的にはまだそれができない何かがあった。

「今夜は本当にありがとう。明日楽しみにしてるね」

「おぉ! まかされて~! オレの方こそおおきに、楽しかった。おやすみ」

「おやすみ」

振り向きながら何度も手を振って、彼女と別れた。明日はハードルを越えよう。そう考えていた。

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2007年4月22日日曜日

1990年代~ナリのコト~(34)

七条本町のコンビニの向かいでタクシーを降りたオレたち。そこからは、どちらのマンションも歩いて10分ほどである。

「今日はありがとう。本当に楽しかった」

「い~え。どういたしまして、姫」

夕方、アラジンを観たのが、もうだいぶ前のように感じるが、アラジンを真似てオレは言った。ナリさんは、笑いながら

「やだ。もう」

「お送りします」

「はい。お願いします」

お互いに顔を見合わせて笑いながら歩いていると、ナリさんのマンションまで、あと1分というトコで数人の人影が見えた。

「やだ、また」

顔を曇らせたナリさんが言った。

「なに?」

「あの連中よ。毎晩、あそこらへんにタムロっててね。別に何かされたワケじゃないんだケド、なんかイヤなの」

見ると、なるほど高校生かハタチくらいの男たちがなにやら楽しそうにしゃべっている。ヤンキーや暴走族というほどの危険性は感じないが、夜も11時半ではあまり好んで近づきたくはない存在だ。オレはナリさんに言った。

「シカトして、フツーに行こう」

「うん。わかった」

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2007年4月21日土曜日

1990年代~ナリのコト~(33)

長崎と福岡の九州談義に花が咲いていた。オレもわかる範囲で参戦しはいたが、基本的には楽しそうなナリさんの横顔を見て、それをアテに飲んでいたようなものだった。

「ごちそうさまでした。今日はありがとうございました」

「いえいえ。こちらこそ、楽しかったです。また、ぜひ来てくださいね」

オレが会計をしている間、ナリさんと、ナオミさん、それぞれが笑顔であいさつしていた。そして、オレたちは出口へ向かうと、トモとユキもカウンターの中から口々に声をかけてくる。

「Kちゃん、おおきに~!」

「あいよ。おやすみ~!」

オレはそう言って、ナオミさんにも

「ごちそうさまでした」

と言って、ナリさんとともに外へと出た。まだ、午後11時少し前の木屋町だが、日曜日だけにいつもよりも人影は少なかった。

「いいお店ね。ありがとう。楽しかった」

「ならよかった。居心地ええねん、あの店。気に入ってもらえてうれしいわ」

オレたちは、河原町通りまでゆっくり歩き、そこからタクシーに乗った。そこでナリさんは、上目遣いで言った。

「七条通りでいいよ、もう少し歩きたいし」

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2007年4月19日木曜日

1990年代~ナリのコト~(32)

「そういえば、ふたりとも九州やんね」

そう言うと、ナオミさんとナリさんは顔を見合わせて

「えぇ~っ!」

と声をそろえて言った。

「ナオミさん、どこなんですか?」

「え? 長崎! 外川さんは?」

「福岡です!」

「わぁ~♪」

と、一気に打ち解けるふたり。オレにとっては、これが九州女性とのご縁の始まりとなるのだが、このトキは、まだそんなコトにも気づくはずもない。

ふたりは、しばし九州ネタに花を咲かせている。そこへ、それまで他のボックスにいたユキが通りかかって耳をダンボにしていた。

「はぁ~い! アタシも九州~!」

と、参戦を表明する。そう、たしかユキも長崎だったコトを思い出した。オレは、九州には高校の修学旅行とこの前年に友人の招きで長崎に行ったコトがあるだけだったので、この九州連合の会話には入れなかった(苦笑)。

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2007年4月17日火曜日

1990年代~ナリのコト~(31)

「ごめん。おまたせ」

「ん~ん。なんか落ち着くね、ここ」

「そう。よかった」

「よく来るの?」

「1年くらい前からかな。週2くらい来てますわ」

「ママさんも、女の子たちもセンスいいね」

「ナオミさん喜ばはるわ、きっと」

と、言っていると

「呼んだ~?」

と、背後からナオミさん出現(笑)!

「わ! びっくりした!」

ナオミさんは、びっくりするオレを笑いながら笑った。

「ごめん、ごめん。アタシの名前が聞こえたものだから、ついね」

「いや、外川さんがね、ここいいお店だねって」

「ホンマに~? うれしいわ~。おおきに」

満面の笑みのナオミさん。ナリさんもうれしそうに

「いえ。本当にそう思います」

そこで、オレは思い出したコトがあり言った。

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2007年4月15日日曜日

1990年代~ナリのコト~(30)

「Kちゃ~ん♪ 彼女?」

カマボコふたりは、うれしそう&楽しそうに聞く。

「ん~と~。ご想像のお任せ~」

と、オレはごまかし半分にふたりを振り切りお手洗いへ駆け込んだ。そう。はっきり「彼女や」と、まだ言えないオレだった。だって、まだ「好きだ」と言っていない。寝たから彼女なのか? そうではない。思いが通じてるかどうかが、オレの中で問われていた。

お手洗いを出ると、トモとすれ違った。トモはもうカマボコではなかったが、オレを認めると小声で言った。

「Kちゃん、センスいいよね」

ナリさんのコト、存在、彼女を選んだオレに言っているのかもしれない。ただ、トモは鋭い感性を持った子であるコトは、これまでの呑み友だちとしての付き合いで、しばしば感じていたコトだ。

「ん~。そのうち、ゆっくり報告するわ」

「楽しみにしてる♪」

オレは、ややカマボコになったトモに笑って席にもどった。ナリさんは、グラスを片手に店のBGMに耳を傾けていた。その姿を見て「かわいい」、そう思った。

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