「だめ」
「なんで?」
「もう遅いの」
「・・・・・・・・・」
受話器のこっちもあっちも無言になった。
1990年代も中ごろの晩秋、オレは長い学生時代を終え半年ばかりの26歳だった。
ナリと出会ったのは、この会話の数ヶ月前だった。
大学をなんとか4年で卒業したものの、フリーターを経て専門学校に2年通い、それなりの資格も取得したものの、社会人になるコトにそれほどの価値も見出せなかった。
そんなオレでも、その資格から、とある会社の嘱託として採用されたのが26歳の春。そして社会人としてのリズムに慣れはじめた初夏、彼女はボクの前に現れた。


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