2007年3月24日土曜日

1990年代~ナリのコト~(11)

なぜ、彼女を誘う言葉が出たのだろう? オレは自分でびっくりしていた。この頃までのオレは、自分から女性を誘うことなどほとんどなかったのだ。だいたい受身で、それでいて向こうから言ってくる女性にはあまり興味がない、そして本当に誘いたい女性には何も言わない、どうしようもない男である。

このときマンションに帰ったオレはそんな自問自答を繰り返していた。なぜ? 彼女を意識していることは言うまでもない。しかし、なぜ? そんなことを考えながらついつい深酒した次の日のこと。なんとか遅刻せずに出勤し、二日連続の寝不足と闘いながら仕事をこなした。その帰り道。昨日とおなじようにやや残業をし、今日はとっとと寝ようと思いながら自転車をこぎ帰路についた。

社から10分ほど走ったところで、向こうから自転車で走ってくるナリを見つけた。彼女もオレを認めると

「あ! お疲れさまです!」

「あれ? これから出勤っすか?」

「あはは! そんなわけないでしょ。忘れ物したんで社にもどるところなの」

「あぁ、そっか。じゃ、お疲れさまです」

と言って行こうとすると、

「あ、Kさん。今夜あいてます?」

「え? あぁ、はいっ!」

「じゃ、ゴハンいっしょにどうですか?」

「いいですよ!」

と、寝不足もふっとぶ展開。7時に三十三間堂からほど近い居酒屋風のお好み焼屋で待ち合わせする約束をして、ナリは社の方へ走り去っていった。そのときに正体がわかるであろう香りを残して。

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