「え? めちゃめちゃ緊張してたでしょ?」
「うん! それがよかったのかも。でも、濃い顔好きなのよ」
「ぷっ! すんませんね濃くって!」
告白なのかなんなのか、よくわからない会話だった。ただ、ナリは積極的な女性であることはよくわかったし、オレ的にはそれが会話をする上でいいリズムとなっていた。そう思っていると、唐突に
「昨日の朝さ、受付にいたでしょ? タケダちゃん、なんか言ってた?」
「いや、ウチのオヤジと彼女の叔父さんが知り合いらしくて、そんな話をしただけですわ」
これは本当の話だが、とっさに話をつくったのはたしかである。
「あ、そうなんだ。てっきり先を越されたかと思ってた」
「先を越す?」
「だって、タケダちゃん、Kさんに声かけるって言ってたからね」
「ナリにはないしょ」の意味がここで明かされた。しかし、そうだとしてもナリにその気がなければ「ないしょ」にする必然性はない。先ほどの前フリから、ひょっとして? というスケベ心がオレの中にわいてきていた。だが、こういうシチュエーションでも簡単にそれを行動に移せないのがこの頃のオレだった。


0 件のコメント:
コメントを投稿