いわばオレのフィールドたる夜の木屋町で、オレはタケダ嬢に手を引かれ歩いている光景が、我ながらこっけいなものだった。
「Kさん、ごめんな。Kさんもヤマダから話聞いてるて思ててんやぁ」
「いや、なんとなく事態は把握しましたわ」
「ほんならええねんけど・・・。さ、どこ行こ? アタシの知ってるとこでもええ?」
「え? はい。おまかせしますわ」
オレにとっては顔なじみの店の前をいくつか素通りしながら、いつの間にかタケダ嬢はオレと腕を組んで歩いていた。そして木屋町を北上し、シャレた感じと、ややいかがわしさも感じるショットバーに連れ込まれた。10席ほどのカウンターに、高めのスツールのテーブル席がふたつの店内。先客はカウンターにひとりいるだけだった。タケダは常連らしく、カウンターの中のバイトっぽいオールバックの店員に声をかける。
「こんばんは~♪ 元気~?」
「い~らっしゃい!」とオールバック。
存在は知っていたものの、初めて入る店だが、場所が木屋町という安心感から、
「まいど!」とオレ。
「いらっしゃい! お~? タケちゃん、ええ男つれてるやん」と口笛を鳴らすような口でオールバックがタケダに笑いかける。
「せやろ~? この人な、今ウチの会社で一番の注目株やねんで~」タケダはオレを指差しながら笑い返す。オールバックは、笑顔で答えながら、
「タケちゃんはいつものでええの?」
とタケダ嬢に聞くと、返事を待たずに
「お兄さんはなに呑まはります?」とオレに聞きながら、おしぼりと灰皿とピスタチオの入った小皿をカウンターの上にすべらせた。 オレはオールバックの背後に並ぶボトルを目で追いながら、
「お? ジェムソンあるんや。それロックでたのむわ」と答える。
学生時代からバーボン、テネシー、カナディアン、スコッチといろいろなウィスキーを呑みながら、一番しっくりきたのがアイリッシュであり、中でもジェムソンがオレのお気に入りだったのだ。タケダ嬢の「いつもの」はモスコミュールだった。軽い乾杯を交わすと、今夜のことを驚いてるオレにタケダ嬢は笑って言った。
「あのふたり、今ごろどこにおんねんやろね~? でもな・・・、そんなことよりKさんに話あんねんや」
「なんですのん?」


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