2007年3月18日日曜日

1990年代~ナリのコト~(5)

日付が変わろうとする時間だが、木屋町はまだまだ賑やかだった。京都の夜というと祇園、先斗町、木屋町である。酒を呑むこと自体が好きなオレは、祇園も行くがどちらかというと木屋町が落ちついた。大学と専門学校の空白の一年によってオレにとっては、生活の一部という意味合いもこの町にはあったのだ。

いわばオレのフィールドたる夜の木屋町で、オレはタケダ嬢に手を引かれ歩いている光景が、我ながらこっけいなものだった。

「Kさん、ごめんな。Kさんもヤマダから話聞いてるて思ててんやぁ」

「いや、なんとなく事態は把握しましたわ」

「ほんならええねんけど・・・。さ、どこ行こ? アタシの知ってるとこでもええ?」

「え? はい。おまかせしますわ」

オレにとっては顔なじみの店の前をいくつか素通りしながら、いつの間にかタケダ嬢はオレと腕を組んで歩いていた。そして木屋町を北上し、シャレた感じと、ややいかがわしさも感じるショットバーに連れ込まれた。10席ほどのカウンターに、高めのスツールのテーブル席がふたつの店内。先客はカウンターにひとりいるだけだった。タケダは常連らしく、カウンターの中のバイトっぽいオールバックの店員に声をかける。

「こんばんは~♪ 元気~?」

「い~らっしゃい!」とオールバック。

存在は知っていたものの、初めて入る店だが、場所が木屋町という安心感から、

「まいど!」とオレ。

「いらっしゃい! お~? タケちゃん、ええ男つれてるやん」と口笛を鳴らすような口でオールバックがタケダに笑いかける。

「せやろ~? この人な、今ウチの会社で一番の注目株やねんで~」タケダはオレを指差しながら笑い返す。オールバックは、笑顔で答えながら、

「タケちゃんはいつものでええの?」

とタケダ嬢に聞くと、返事を待たずに

「お兄さんはなに呑まはります?」とオレに聞きながら、おしぼりと灰皿とピスタチオの入った小皿をカウンターの上にすべらせた。 オレはオールバックの背後に並ぶボトルを目で追いながら、

「お? ジェムソンあるんや。それロックでたのむわ」と答える。

学生時代からバーボン、テネシー、カナディアン、スコッチといろいろなウィスキーを呑みながら、一番しっくりきたのがアイリッシュであり、中でもジェムソンがオレのお気に入りだったのだ。タケダ嬢の「いつもの」はモスコミュールだった。軽い乾杯を交わすと、今夜のことを驚いてるオレにタケダ嬢は笑って言った。

「あのふたり、今ごろどこにおんねんやろね~? でもな・・・、そんなことよりKさんに話あんねんや」

「なんですのん?」

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