「Kちゃん♪ アタシもいてるで~」
「ユキちゃんもかいっ!?」
当時、よく通っていたショットバー「Mobby's」。そこは、バーテンダーが全員女性、それも女子大生がほとんどなのだ。トモもユキも、そこのバーテンダーであり、プライベートでもよき呑み仲間だった。彼女たちに声をかけた男も、よく見ると「Mobby's」で見たような顔だった。
「Kちゃん、この店てめずらしいんちゃうん?」
トモが言う。
「うん。初めてやねん」
と言いながら、となりで寝息を立てるタケダ嬢を指差しながら
「一種の接待やな」と苦笑してみせた。すると、ユキが苦笑しながら
「なるほどね。Kちゃんももうサラリーマンやねんなぁ。あ、ごめん、サカタさんが待ってるわ。またね」
と言いオレの横をすり抜け、トモはサカタに見えないように舌を出しながら
「ごめん、こっちも接待みたいなもんなんよ。じゃ、また、呑もうね」
「おう。またな」
と言って、彼女たちはカウンターの奥へ行くとサカタを挟む形で座って、それぞれに注文をしている。それまでまったく存在感のなかったサカタが楽しそうにはしゃぎ出す声が聞こえたので、オレも潮時かなと、オールバックがトモたち3人のオーダーをさばくのを見計らってから、グラスに残っていたジェムソンを飲み干し、
「帰るわ。ほな、タケダさんのこと頼みますわ」
とオールバックに言い、トモとユキに目配せし、勘定を済ませた。
「おおきに。タケちゃんはちゃんとタクシーに乗せますよって、ご安心を。よかったらまた来てくださいね」
と言うオールバックに、オレは笑って答えながら店を出た。


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