2007年4月2日月曜日

1990年代~ナリのコト~(19)

イカワヒデミ、たしかナリさんと同じ歳の女性だ。冷めてるようで、ときおり熱い一面を発揮する独特の存在感を持つ女性である。

「イカワさん・・・・・?」

ナリさんの告白に、オレは静かに驚きの声をあげた。何がどこでどうリンクしているのかがわからなかったからだ。

「彼の手帳にね、ある日突然イカワさんの電話番号が書いてあったの」

その事実よりも、そんなに頻繁に手帳をチェックしていたことが驚きだった。そんな事実を聞いて、オレに何が言えるのだろう? という疑問も沸いた。ナリさんは、まだニシダのコトを忘れていない、漠然とそう思ったし、それは間違いないだろうという確信とともに。それなら、なぜオレなのか? そう言おうとして彼女を見ると、天井をにらみつけるように上を見ていた。

「オレ、帰るね」

「え? 泊まっていけばいいのに」

「おおきに。でも、オヤジが不審に思うだろうしね」

オレはオヤジが仕事場にしている3LDKのマンションに同居していた。外泊したとしても、別に何を言われるわけでもなかったが、なんとなく彼女をひとりにし、オレ自身もひとりになった方がいいような気がしたのだ。

服を着て、玄関に向かおうとすると、裸にTシャツを着ただけのナリさんが後を追ってきた。オレは振り返ってナリさんと向かい合った。彼女も余計な話をしたと思っていたのかもしれない。神妙な顔で、上目遣いにオレを見ている。

そんな彼女を、オレはそっと抱きしめた。

「今夜はありがとう。日曜日、楽しみにしてるね」

「・・・うん・・・ん・・・」

オレは、彼女の返事をかき消すようにキスをした。

外は、夜明け前。少し肌寒い街を歩きながら、オレは家路についた。


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