「イカワさん・・・・・?」
ナリさんの告白に、オレは静かに驚きの声をあげた。何がどこでどうリンクしているのかがわからなかったからだ。
「彼の手帳にね、ある日突然イカワさんの電話番号が書いてあったの」
その事実よりも、そんなに頻繁に手帳をチェックしていたことが驚きだった。そんな事実を聞いて、オレに何が言えるのだろう? という疑問も沸いた。ナリさんは、まだニシダのコトを忘れていない、漠然とそう思ったし、それは間違いないだろうという確信とともに。それなら、なぜオレなのか? そう言おうとして彼女を見ると、天井をにらみつけるように上を見ていた。
「オレ、帰るね」
「え? 泊まっていけばいいのに」
「おおきに。でも、オヤジが不審に思うだろうしね」
オレはオヤジが仕事場にしている3LDKのマンションに同居していた。外泊したとしても、別に何を言われるわけでもなかったが、なんとなく彼女をひとりにし、オレ自身もひとりになった方がいいような気がしたのだ。
服を着て、玄関に向かおうとすると、裸にTシャツを着ただけのナリさんが後を追ってきた。オレは振り返ってナリさんと向かい合った。彼女も余計な話をしたと思っていたのかもしれない。神妙な顔で、上目遣いにオレを見ている。
そんな彼女を、オレはそっと抱きしめた。
「今夜はありがとう。日曜日、楽しみにしてるね」
「・・・うん・・・ん・・・」
オレは、彼女の返事をかき消すようにキスをした。
外は、夜明け前。少し肌寒い街を歩きながら、オレは家路についた。


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