「ねぇ、ユギさんてカッコいいと思う?」
「え? ユギさん?」
「そう。小室哲哉っぽいあの人」
「いや、知ってるも何も、同級生やでユギは」
「あら? そうなの?」
正社員として入っているユギは、この春まで同じ専門学校にいた。厳密に言えば、年齢はいっしょだが、学年は彼がひとつ上になる。専攻の関係で、いっしょになるコトが多かったが、実はあまり得意なタイプではない。クールな表情で、大学時代には海外留学の経験もあってか、スマートな男である。そして、彼はナリさんと同じように香りをまとう男だったのだ。
「あの人の香りって好きなのよ。Kさんは、香りつけたりするのイヤ?」
「いや、べつにイヤやないケド。そういう習慣がないダケ」
「今度、プレゼントしていい? きっとKさんに似合うなぁ、って思うのがあるのよ。あとね、スーツなんだケドね」
「スーツ?」
「あまり持ってないでしょ?」
「いやあ、だってまだ社会人一年生やもん。そうそう何着も買えませんって」
「学生時代とかは、スーツ着なかったの?」
「ごくまれにね。でも、それって会社で仕事するようなスーツやなしに、遊びていうかパーティとかで着るようなもんやし。それ以外はジーンズと皮ジャンにTシャツばっかし」
「ふーん、そうなんだ」
「だって、オレってロックンローラーだもんね」
「あはは♪ そうだよね。でもね、着て欲しいスーツがあるの。ていうか、こういうコト言われるってイヤ?」
「いや、べつに。ただブランドとか、あんまり知らへんし、まだそんなにお金もないしね」
「じゃ、ポール・スミス。アタシ大好きなんだ。きっとKさんに似合うと思うの」
「いいよ。お金ためとくわ。でも、そうなると、あんまり豪勢なデートはできまへんで~」
と、笑って言うと彼女も笑った。押しが強いなぁ、それが率直な感想ではあった。ジーンズ、Tシャツ、皮ジャンに、今は切ってしまったロン毛。それがオレのスタイルだっただけに、未知の領域への誘いであった。


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