「も一軒行こうか?」
「うん! でも、アタシはもうあんまり呑めないよ。それでもよかったら」
「ぜんぜんオッケー。じゃあ、とっておきの隠れ家へ招待しまひょ」
「わ、楽しみ♪」
と、彼女を連れて行ったのは、なんのコトはない「Mobby's」である。Sビルの地下階段を慣れた足取りで降りていくオレの後を、彼女はついてくる。ドアを開けると、すぐにナオミさんの声が飛んできた。
「Kちゃん、いらっしゃい!」
と言って、ナオミさんはオレを見ると目を丸くしている。そう、オレはここに女性づれはおろか、複数で来たコトがなかったのだ。そして、カウンターの「Kちゃん席」ではなくボックスに座ったオレたちにオシボリを持ってきたナオミさんはさっそく彼女に言った。
「いらっしゃいませ。はじめまして」
そして、オレの方に向くと、目が「紹介して」と催促していた。
「えっと、こちらおなじ会社の外川さん」
「よろしく! ナオミです。ゆっくりしていってくださいね」
「はい。こちらこそ」
「素敵な人ねぇ、Kちゃん?」
「そ、そうっすね」
好奇心に満ちた目でナオミさんは笑った。
「Kちゃんは? コロナ?」
「うん。ナリさん、ソフトドリンクの方がええ?」
「そうねぇ。せっかくだし、なんか軽めのものがいいな」
「うん。じゃ、チンザノ・ロッソを薄いめで」
「はぁい。わかりました」
と言うと、ナオミさんはカウンターの方へ戻っていった。
「キレイな人ね。ママさん?」
「うん。ていうか、オーナー? チーフバーテンダー? オレにとっては姉さんみたいなもんかな?」
「そうなんだ。でも、目がカマボコになってたね」
と、笑った彼女に
「カマボコて?」
「ほら、こういうの」
と言って、好奇心に満ちた目で横からのぞくような顔をする。なるほど、こういうトキの目の形は、半円形でカマボコのようである。しかし、その表情がおかしくてオレは思わず吹き出した。
「やだ、笑いすぎ」
「ごめん、ごめん。でも、なるほど、カマボコね~。うまいコト言うなぁ」
と、まだ笑いがとまらないオレだった。


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