2007年5月26日土曜日

1990年代~ナリのコト~(45)

おずおず入ってきた千里は、ナリさんに目をとめた。

「おんなじ会社の外川さん」

と紹介し、ナリさんには

「妹の千里ですわ」

と、紹介する。

「はじめまして。アニキがお世話になってます」

「いえ、こちらこそ。はじめまして、外川です。よろしく」

笑顔であいさつを交わすふたりを見ながら、オレは千里に言った。

「オマエも呑むか? 腹へってんやったらカレーあんで」

「ホンマ? アタシめちゃおなかすいてんねん」

「こいつ、ここ来るトキはいっつも腹へらして来るんですわ」

オレは、笑いながら彼女にそう言うと、彼女も笑って言った。

「若いもんね」

と、笑う彼女に千里はきっぱり言った。

「それだけが取り得なんです」

「あほ。そんなもんダレかてあったわい」

千里は、オレのつっこみにニヤリと笑うと

「カレー食べる~♪」

と、皿を出してジャーからご飯を盛りだした。それを見ていたナリさんは

「じゃ、アタシ、そろそろ帰るね。遅くまでお邪魔しました」

「あ、ごめん。そこまで送ってくわ」

「ありがとう。じゃ、千里さん、お邪魔しました。また」

「はい! お邪魔虫ですみません。また、来てくださいね」

「オマエんちか? カレー全部食べてええで」

「は~い! って、食べれるか!」

「おっけ! ええノリつっこみや。ほな、そこまで出てくるし」

「あい! いってらっしゃ~い」

もはや、カレーを食べるコトしか目に入っていない千里を後にして彼女とともに外へ出た。マンションの4階には、涼しい風が吹いていた。

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2007年5月20日日曜日

1990年代~ナリのコト~(44)

「ダレやろ?」

彼女を抱きしめるために立ち上がったのだが、その足をインターフォンに向かわせようとして、彼女を見つめた。まだ、涙目の彼女は、我に帰ったように無理に笑みを浮かべようとしていた。

「ごめんね。ちょっと待ってて」

インターフォンまで行き、受話器を取ってオレは言った。

「はい?」

「あ、アニキ? アタシ!」

「あぁ、なんや、オマエか?」

妹の千里だった。京都市内に住む大学生の妹は、食事を求めて時折ここにやってくる。遊ぶのに一生懸命で、金がなくなると腹を減らせてやってくるのだ。

「妹や」

涙をふいて立ち直った彼女にそう言って、玄関に向かう。ドアを開けると妹が立っていた。

「ごめんな、遅い時間に」

そう言って中に入ろうとして、見慣れない女ものの靴に気づいたようだ。

「あ、ごめん。帰った方がええかなぁ?」

「ええよ。入れや」

無碍に返すワケにもいかず、そう言ってしまうオレ。


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2007年5月13日日曜日

1990年代~ナリのコト~(43)

「ナリさん・・・?」

「・・・。ごめんね。・・・本当にアタシ、バカだよね」

涙声の彼女は、オレを見ながら、やっとそう言った。それを聞いて、オレたちはようやくスタート地点に立ったのだと思った。

彼女の中に、ニシダのコトが残っているコトは間違いないだろう。でも、彼女はオレにそれを消してほしいと思っている。ニシダがまだ好き? と聞いて答えた「そんなコトないよ。きっと」の「きっと」には、きっとそんな思いがあるのだと感じた。

「泣かないで、ナリさん」

「うん。ごめんね」

そっと立ち上がったオレは、彼女に近づいた。そして彼女をそっと抱きしめようとした、そのトキその音は鳴った。

「ピンポーン♪」

玄関のチャイムだった。

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2007年5月8日火曜日

1990年代~ナリのコト~(42)

言わなければよかった、そう後悔しそうなになったトキ、彼女は言った。

「もちろん。だって、ニシダさんカッコよかったんだもん」

取り越し苦労どころか、彼女はより饒舌になったコトに少なからず驚いた。

「アタシね、仕事のできる人がすごい好きなのよ。あの人って、ふだんはすごくおもしろい人なんだケド、仕事で熱くなると顔つきが変わるのよ」

前の彼、そう言ってよいのかどうかもわからない発言だった。九州の人は嘘をつけない性格だというのは本当なのか。複雑な気持ちで聞いていた。その後もしゃべり続ける彼女の発言は、オレの耳に入らなかった。

「あ、ごめんね。ひとりでしゃべっちゃったね」

「いや。ナリさんは正直な人やな」

「そうなのかな。でも、本当にごめん。ちょっと無神経だった」

「ううん。でも・・・・」

聞くのが怖い、そんなヒトコトを口にしかけて、戸惑うオレ。でも、ここを突破しなければこれ以上、彼女といっしょにいるコトはできない、思い切って言った。

「今でも、・・・ニシダさんのコト好きなん?」

やや、沈黙があった後、彼女は語った。

「・・・・・。そんなコトないよ、きっと」

「信じてええの?」

「うん」

うつむき加減で語っていた彼女は顔を上げた。オレは、その顔を、目を見つめていった。

「よかった。そのヒトコトを聞かへんかったら、オレ・・・・・、ナリさんが好きだって言えへんし」

彼女の目に涙が浮かんでいた。

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2007年5月5日土曜日

1990年代~ナリのコト~(41)

「Kさんて、自分から告白とかしないでしょ」

学生時代の話をしていると、唐突に彼女はそう聞いてきた。

「わかる? アカンねん。ナリさんは?」

「アタシは、けっこー言う方かな」

「そんな感じする」

「あはは♪ やっぱり? でも、なんで? 好きだったら言えばいいのに。Kさんって、やさしいしモテるはずだもん」

「ん~、むずかしいねん。モテるかどうかはともかく、あんまり向こうから言われてもピンとこーへんねやな。だからけっこー片思いが多いねん」

「わ、アタシそれ苦手かも~」

「あはは。そう。大学時代の後半2年、ずっと片思いの人いてたしね」

「言わなかったんだ?」

「言えへんかった。なんでやろ、わからへんケドね」

苦笑するしかなかったオレ。そこで、オレはあえて振ってみた。賭けである。

「ニシダさんにも、自分から言うたん?」

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2007年5月3日木曜日

1990年代~ナリのコト~(40)

「いただきま~す!」

ビールで乾杯し、ゴクリと一口飲み干したオレたちは、カレーを前にして同時に叫んだ。顔を見合わせて笑いながら、スプーンを進めた。熱々&やや辛めのカレーをハフハフ言いながら口に運ぶ。

「おぉいし~♪」

「ホンマ? よかった~!」

「うん! 本当においしい! 作り方教えて~」

と、うれしい注文に作り方を説明するオレ。

「学生時代からの試行錯誤ですわ」

「へぇ~! これなら食べすぎちゃいそう」

笑いながらそう言う彼女に、オレも思わず笑顔になる。ジャガイモを食べながらオレは言った。

「カレーのジャガイモだめって言う人、たまにいてんねんケド、オレはジャガイモのないカレーはアカンねん。ナリさんは?」

「あ、あたしもジャガイモ好きよ。あとどっちかって言ったら、こんなふうにややスープっぽい方が好き」

「同感! あんまりドロっとしてんのはちょっと苦手やね。あ、辛さ大丈夫?」

「うん。これくらいなら平気よ。でもビールが進むとあとが怖いよぉ」

「あはは! オッケーごゆっくりどうぞ~」

カレーを食べながら、合間にサラダをに箸をつける。思ったとおり、ガーリックのきいたドレッシングだった。

「うん! うまい! このドレッシングてナリさん作ったん?」

「うん! 明日のこと考えたらちょっと~なんだけど、ガーリック入れるとおいしいのよ」

「なるほど、でも明日のことは置いといてもええ味やね。ホンマにうまいもん」

「ありがとう♪ 気に入ってもらえてうれしいな」

カレーで、ある程度お腹がみたされ、サラダをアテにワインを飲んだ。学生時代の話、今の仕事の話、いろいろな話が弾んだ。

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2007年5月1日火曜日

1990年代~ナリのコト~(38)

ピンポ~ン♪

「はぁい!」

「こんばんわ~♪」

彼女もシャワーを浴びてきたのだろう。ドアを開けると、いつも以上に輝く彼女が立っていた。

「どうぞ~!」

「お邪魔しまぁす! わぁ、いいにおい!」

「でしょ? もうほぼ完成でっせ」

「楽しみ♪ あ、はいこれ!」

「え? なに?」

「サラダ。作ってきちゃった」

「おぉ! ありがたい。そこまで手がまわらへんかったし」

「よかったぁ」

「じゃ、そこらに座ってて。準備するから」

オレは、彼女から手渡されたタッパァを受け取り、シンクに置き皿を取り出し盛り付けた。レタス、トマト、キュウリ、カイワレに炒めたベーコンとシンプルながら、ガーリックをきかした食欲をそそる香りがしていた。

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