彼女を抱きしめるために立ち上がったのだが、その足をインターフォンに向かわせようとして、彼女を見つめた。まだ、涙目の彼女は、我に帰ったように無理に笑みを浮かべようとしていた。
「ごめんね。ちょっと待ってて」
インターフォンまで行き、受話器を取ってオレは言った。
「はい?」
「あ、アニキ? アタシ!」
「あぁ、なんや、オマエか?」
妹の千里だった。京都市内に住む大学生の妹は、食事を求めて時折ここにやってくる。遊ぶのに一生懸命で、金がなくなると腹を減らせてやってくるのだ。
「妹や」
涙をふいて立ち直った彼女にそう言って、玄関に向かう。ドアを開けると妹が立っていた。
「ごめんな、遅い時間に」
そう言って中に入ろうとして、見慣れない女ものの靴に気づいたようだ。
「あ、ごめん。帰った方がええかなぁ?」
「ええよ。入れや」
無碍に返すワケにもいかず、そう言ってしまうオレ。


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