2008年10月28日火曜日

1990年代~ナリのコト~(50)

結局Mobby'sではオレが肴にされたようなものだった。でも、彼女たちに悪気がないコトはオレはよく知ってる。だてに長く常連やってるワケではないのだ。

カラン♪

入り口のドアの音とともにマサちゃんが入ってきた。

「あ! マサちゃん、ヤッホー!」とナオミさんの元気な声。

「おはよう」と答えながら、マサちゃんはカウンターのオレの横にやってきた。

「おつかれっす」とオレ。

「おつかれ、Kちゃん。あ、オレもコロナね」とマサちゃん。

「はぁ~い」と答え、コロナを準備するナオミさんは唐突に言う。

「ねぇねぇ、マサちゃん、Kちゃんいいコトがあったの知ってるぅ??」

「え! そうなん? なになにKちゃん?」

「待った! ナオミさん、カンベンしてやホンマ」

「あはは♪ ごめんごめん」

「なになに? ええやん、聞かせてよ」

やれやれ。ここではプライベートもなにもあったものではない。でも、ここは我が家のような居心地のよさがあり、こういうコトも常連とスタッフの間では許されていた。

「ん~。まぁ、なんちゅーか、彼女ができたような感じ? って感じ」

「へぇ、そうなんや! Kちゃん、よかったやん! って、感じってなんやねん?」

「まぁ、そういうこっちゃ(苦笑)」

「わからへんって(笑)!」

ともあれ、イキサツをかいつまんで話し、マサちゃんと乾杯をした。ひとつ年上の彼は、オレにとってアニキ的な存在だったし、話す機会を得られてよかったのかもしれない。
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2008年10月25日土曜日

1990年代~ナリのコト~(49)

こうして、オレとナリさんの付き合いは始まった。

切なくて短い付き合いとなることなど、このトキは思っていなかった。


そんな週末は三連休だった。ナリさんは、以前からアキタ嬢&タケダ嬢とともに香港へ行く予定だった。寂しいと思うものの、以前からの予定ではしょうがない。

「お土産買ってくるからね♪」

と申し訳なさそうに笑うナリ。

「うん、楽しみにしてるわ。気をつけて行ってきてや」

「了解でぇっす!」


彼女が旅立った土曜日の夜、Mobby'sの指定席にオレはいた。ナリと来て以来だったので、いろんな詮索を覚悟してのことである。

「Kちゃん、いらっしゃ~い」

ナオミさんの声に、トモ、ユキの声も重なっている。どうして、いつもいるんだオマエらはと苦笑しながら、「まいど」と返すオレ。

いつもどおりコロナを呑んでいると、三人が三人とも目がカマボコになっている。

「君ら、目ぇ変やで」

「あら、そうかしら」

とカマボコ目のまんま笑う三人。

「わかったて。ちゃんと話すから」

「さっすがKちゃん!」

「なにがさすがなんかようわからへんっちゅーねん」

「あはは♪ で、で、?」

露骨というか、好奇心の固まりである。ここまでオレなんぞの動向に興味を持っているとは以外でもあるが。

「こないだの彼女、外川さんのコトやね? まぁ、なんちゅーか、付き合ってますよ」

きゃあ~~~♪ と三人の黄色い悲鳴(?)が上がる。

「やっぱり!」とユキ。

「Kちゃん、おめでとう♪」とトモ。

「よかったね。いい子やないの」とナオミさん。

「みなさん、おおきに。おかげさんで」と照れ笑いするしかないオレ。

今ごろ、ナリさんはアキタ嬢&タケダ嬢とどんな香港の夜を過ごしているのかなぁ、と思いながら。
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2008年1月15日火曜日

1990年代~ナリのコト~(48)

「夕べはごちそうさまでした♪ 本当においしかった」

並んで自転車を走らせながら、ナリさんはまぶしいほどの笑顔でそう言った。

「いーえ♪ 今度はナリさんのご招待、楽しみにしてますわ♪」

「うん! がんばるね^^♪」

初秋の朝とはいえ、日差しは強い。スカートをはかない彼女はいつものスラックスに、明るいブルーのシャツだ。ネクタイをしめるオレは、早くも汗ばんでいた。クルマの少ない裏通りを笑いあいながら走るオレたち。社まで半分ほどの道程で、彼女は突然言った。

「あ!」

「え? なに?」

「大野さん」

彼女の視線の先に、ひとりの女性の後姿があった。たしか出版部の女性であるコトは知っていたが、オレは名前までは知らない。

「じゃ、Kさん、先に行ってくれる?」

「え? あ、そっか。了解!」

彼女は、まだオレたちのコトを公表する気はないらしい。かすかな不満を感じつつ、スピードダウンする彼女を後にし、オレはスピードアップし社へ向かった。ほとんど面識のない大野さんとやらの横をすり抜けて。

「おはよーございます!」

そう言って部内に入った。夕べの喜びと、今朝の小さな不満の入り混じった複雑さで一日が始まった。

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