2008年1月15日火曜日

1990年代~ナリのコト~(48)

「夕べはごちそうさまでした♪ 本当においしかった」

並んで自転車を走らせながら、ナリさんはまぶしいほどの笑顔でそう言った。

「いーえ♪ 今度はナリさんのご招待、楽しみにしてますわ♪」

「うん! がんばるね^^♪」

初秋の朝とはいえ、日差しは強い。スカートをはかない彼女はいつものスラックスに、明るいブルーのシャツだ。ネクタイをしめるオレは、早くも汗ばんでいた。クルマの少ない裏通りを笑いあいながら走るオレたち。社まで半分ほどの道程で、彼女は突然言った。

「あ!」

「え? なに?」

「大野さん」

彼女の視線の先に、ひとりの女性の後姿があった。たしか出版部の女性であるコトは知っていたが、オレは名前までは知らない。

「じゃ、Kさん、先に行ってくれる?」

「え? あ、そっか。了解!」

彼女は、まだオレたちのコトを公表する気はないらしい。かすかな不満を感じつつ、スピードダウンする彼女を後にし、オレはスピードアップし社へ向かった。ほとんど面識のない大野さんとやらの横をすり抜けて。

「おはよーございます!」

そう言って部内に入った。夕べの喜びと、今朝の小さな不満の入り混じった複雑さで一日が始まった。

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