並んで自転車を走らせながら、ナリさんはまぶしいほどの笑顔でそう言った。
「いーえ♪ 今度はナリさんのご招待、楽しみにしてますわ♪」
「うん! がんばるね^^♪」
初秋の朝とはいえ、日差しは強い。スカートをはかない彼女はいつものスラックスに、明るいブルーのシャツだ。ネクタイをしめるオレは、早くも汗ばんでいた。クルマの少ない裏通りを笑いあいながら走るオレたち。社まで半分ほどの道程で、彼女は突然言った。
「あ!」
「え? なに?」
「大野さん」
彼女の視線の先に、ひとりの女性の後姿があった。たしか出版部の女性であるコトは知っていたが、オレは名前までは知らない。
「じゃ、Kさん、先に行ってくれる?」
「え? あ、そっか。了解!」
彼女は、まだオレたちのコトを公表する気はないらしい。かすかな不満を感じつつ、スピードダウンする彼女を後にし、オレはスピードアップし社へ向かった。ほとんど面識のない大野さんとやらの横をすり抜けて。
「おはよーございます!」
そう言って部内に入った。夕べの喜びと、今朝の小さな不満の入り混じった複雑さで一日が始まった。

