「いらっしゃい、Kちゃん」
「まいど」と言い返しながら、カウンターの端に座る。
オレより3歳年上のマスターは、キープしてあるオレのジェムソンを出しながら
「ロック?」と聞く。
「ごめん。今夜はジェムソンはなし。CCショットでもらうわ」
と、先ほどまでと空気を変えるつもりでオーダーする。マスターはうなずくと、CCを取り出しロックグラスについでいる。ほぼ同時に、店の奥からオレと同じ歳の店員である橋が小皿を片手に出てきた。
「いらっしゃい、Kちゃん。今日は遅いやん」
ピスタチオを盛った小皿を差し出しながら、橋は笑う。そして、マスターがCCのグラスを小皿の横にすべらせる。他に客はいないといっても、絶妙のタイミングだ。
「まぁね。今日は疲れたわ、ホンマ」
と、今夜のことをダイジェストで伝える。マスターと橋は笑顔で聞いている。ここは、オレが専門学校生の頃から通う深夜の指定席なのだ。ふたりとも歳が近いわりには、店のBGMはブルースという落ち着いた雰囲気が落ち着く原因だ。
「Kちゃんも社会人やねんなぁ。ちゃんとご接待してはるやん」と笑う橋。
「でも、Kちゃんどこいっても、やっぱりモテてるとこがすごいね」とマスター。
「マスター、それ褒めてんの? からかってんの?」と返すオレ。
「褒めてるに決まってるやん」となぜか橋も声をそろえて言う。
「わぁかったて。褒めてるけど、なんや知らん楽しんでるやろ?」とオレは彼らの真意を汲み取ると、ふたりとも「あたり!」と笑う。
そんな会話をし、CCをなめながら思う。ヤマダとアキタ嬢はどうしただろう? タケダ嬢は無事に帰っただろうかと。


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